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2026年8月5日水曜日 朝刊 定価 無料
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AIが「未来の暗号標準」の弱点を見つけた——Anthropicが発表した2つの暗号解読研究の中身

▶ Anthropicが7月28日、Frontier Red TeamによるClaude Mythos Previewを用いた暗号解読研究を公開。NIST耐量子暗号候補「HAWK」への大幅な攻撃精度向上、ラウンド削減版AESへの自律的な新規攻撃発見、それぞれ約10万ドルの計算コストで導出されたプロセス、研究者との粘り強いプロンプトのやり取り、新設ベンチマーク「CryptanalysisBench」まで、研究の防御的意義と両刃の剣としての側面を解説する。

AIが「未来の暗号標準」の弱点を見つけた——Anthropicが発表した2つの暗号解読研究の中身
(写真はイメージ)

AIが「未来の暗号標準」の弱点を見つけた——Anthropicが発表した2つの暗号解読研究の中身

7月28日、AnthropicのFrontier Red Team(フロンティア・レッド・チーム、同社のAIモデルが持つ潜在的なリスクを評価する専門チーム)が、「Discovering cryptographic weaknesses with Claude(Claudeで暗号の弱点を発見する)」と題した研究を公開した。同社の最先端モデルであるClaude Mythos Previewを使い、2つの暗号アルゴリズムに対する新しい攻撃手法を発見したという内容だ。研究者出身のジャーナリストとして、この研究の中身と、その意味するところを丁寧に見ていきたい。

対象となった2つのアルゴリズム

今回の研究で扱われたのは、性質の異なる2つの暗号技術だ。

1つ目は「HAWK」という、量子コンピュータの時代でも安全性を保てるように設計された、いわゆる耐量子暗号(ポスト量子暗号)の一種で、デジタル署名(データの送信者を証明する技術)に使われる方式だ。HAWKは、米国立標準技術研究所(NIST)が進めている、将来の暗号標準を選定するための審査プロセスの候補の一つに挙がっている。今回、Claudeはこの方式に対して、既存の攻撃手法を大幅に上回る精度の攻撃を発見した。

2つ目は「AES」という、世界で最も広く使われている対称鍵暗号(データの暗号化と復号に同じ鍵を使う方式)に対する攻撃だ。ただし対象となったのは、通常の完全なAESではなく、内部の処理ラウンド数を減らした「ラウンド削減版AES」で、こちらに対する新しい攻撃手法が示された。

Anthropicは、いずれの発見も「現時点で実際に使われているシステムに影響を与えるものではない」と明確に述べている。HAWKはまだ標準として正式採用されていない審査中の候補であり、ラウンド削減版AESは実運用で使われている完全版のAESとは異なる、研究用の簡略化されたバージョンだからだ。

「ほぼ自律的に」導き出された結果

この研究で技術的に興味深いのは、成果の導出プロセスだ。HAWKへの攻撃は、Anthropicの研究者1人がClaudeと1週間かけて協働しながら組み立てたものだが、AESへの攻撃の方は、別の研究者が用意した「足場」(Claudeが自律的に探索・実行できるように整えられた作業環境)の中で、Claudeがほぼ完全に自律的に発見したという。

それぞれの結果を導くのにかかった計算コストは、API利用料換算でおよそ10万ドルだったとAnthropicは説明している。ここで重要なのは、Claudeが最初から簡単にこの結果を出せたわけではないという点だ。Anthropicが公開した実際のプロンプトのやり取りを見ると、研究者が「それは解けないとモデルが思い込んで、試そうとさえしない」ことに繰り返し直面し、「簡単な成果で満足せず、公表する価値のある本物の発見を探してほしい」といった、粘り強い誘導のやり取りを重ねていたことが分かる。AIが何でも自動的に解決してくれるわけではなく、適切な足場と、根気強いプロンプト設計があって初めて、この種の成果につながるということだ。

この研究が持つ「二面性」

Anthropicはこの研究を、「攻撃者より先に弱点を見つけることで、暗号を強化する」という防御的な文脈で位置づけている。実際、これは暗号研究のあるべき姿そのものでもある——新しい暗号方式が標準として採用される前に、あらゆる角度からストレステストを行い、信頼性を積み上げていくというプロセスだ。

同時にAnthropicは、この結果が持つ「両刃の剣」としての側面も認めている。同社が以前、Claude Mythos Previewを公開した際には、このモデルがほぼあらゆるソフトウェアに対して、自律的に脆弱性を発見し悪用できることを示していた。今回の暗号分野での成果は、その延長線上にある。AIモデルの能力が上がるにつれて、同じ能力が防御にも攻撃にも使いうるという構図が、暗号という極めて基礎的な技術領域にまで及んできたことを意味している。

研究者として見ておきたいこと

Anthropicは今回、CryptanalysisBenchという、AIモデルの暗号解読能力を評価するための新しいベンチマークも合わせて公開した。これは、様々な暗号技術に対するAIモデルの能力を、体系的に測定・比較できるようにするための取り組みだ。

この種のベンチマークが整備される意義は大きい。AIモデルが暗号分野でどこまでの能力を持つのかが、個別の華々しい発表だけでなく、継続的かつ定量的に追跡できるようになれば、暗号コミュニティ全体が「次にどんな暗号標準を採用すべきか」「どのモデルのどんな能力に警戒すべきか」を、より根拠を持って議論できるようになる。

今回の発表は、AI企業が自社モデルの能力を誇示する目的の発表ではなく、暗号研究という既存の学術コミュニティに対して、透明性を持って結果を差し出すという形を取っている点でも、evaluatingしがいのある事例だと言える。今後、他のAI企業や独立した暗号研究者が、CryptanalysisBenchを使ってどのような追試や検証を行っていくのか、注目していきたい。

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「外国製ヒューマノイド禁止」の2日後にUnitreeが上場申請——米中ロボット摩擦の最新局面を整理する

▶ FCCが7月28日、外国製ヒューマノイド・四足歩行ロボットをCovered Listに追加し新規認証を制限。既存モデルや所有機器は対象外という規制の実態、その2日後に上海STARマーケットへ上場申請したUnitree(2025年売上17億元、コア営業利益5.91億元)の財務内容、同週発表されたGoogle DeepMindのGemini Robotics 2(全身統合制御、タスク別成功率36〜92%)まで、懐疑的な視点で整理する。

「外国製ヒューマノイド禁止」の2日後にUnitreeが上場申請——米中ロボット摩擦の最新局面を整理する

7月28日、米連邦通信委員会(FCC)が「Covered List(対象機器リスト)」という規制リストに、外国製の「先進ロボット機器」——具体的にはヒューマノイドや四足歩行ロボットなど——を新たに追加した。その2日後、規制対象の筆頭格と目される中国のUnitree Roboticsが、上海証券取引所STARマーケットへの上場を正式に開始した。タイミングの良さに驚いた読者もいるかもしれないが、中身を丁寧に見ていくと、報道の見出しほど劇的な話ではない。

「禁止」という見出しの中身を検証する

まず今回のFCC措置の実態から確認したい。多くの見出しは「外国製ヒューマノイド禁止」と報じているが、これは正確ではない。FCCが今回のCovered Listに追加したのは、あくまで「新規に認証を申請するモデル」に対する規制だ。既に7月28日以前に認証を取得済みのモデル、既に個人や企業が所有している機器、そして連邦政府による購入・使用は、いずれも今回の措置の対象外とされている。

FCCがこの措置を単独で決めたわけでもない。「Secure and Trusted Communications Networks Act(安全で信頼できる通信網法)」という法律の枠組みの下、国家安全保障当局が行った判断に基づいてFCCが動く、という構造になっている。今回の通知では特定の企業名や国名は明記されておらず、対象国籍を問わず「外国での生産」であること自体が基準とされている。メーカーは国防総省に対して「条件付き承認」を申請することで、認証への道を回復することもできる。

見出しだけを見て「Unitreeが締め出された」と早合点するのは早計だ。実際には、既存の販売網や受注ルートには変化がなく、影響が及ぶのは「これから米国での認証を新規に取ろうとする、まだ認証を持っていないモデル」に限定される。

2日後の上場は「対抗」ではなく「既定路線」

FCCの措置から2日後の7月31日、Unitreeは上海STARマーケットでの新規株式公開を正式に開始した。新株4,045万株(拡大後資本の10%)を発行し、約42億元(およそ620百万ドル)の調達を目指す内容で、評価額はおよそ420億元规模になる見込みだ。

タイミングだけを見ると「米国の規制に対抗して急遽動いた」ようにも見えるが、これは誤解を招きやすい。IPOの登録審査自体は、STARマーケット史上最速となる104日間で完了しており、今回のブックビルディングは8月5日、価格決定は8月6日、申込は8月10日、結果発表は8月14日という、以前から準備されてきたスケジュールに沿ったものだ。FCCの措置とUnitreeのIPO、この2つは偶然近いタイミングで重なっただけで、直接の因果関係を示す証拠は今のところない。

ソフト屋として気になる「収益性」という数字

個人的にこのニュースで一番興味深いのは、規制の駆け引きよりも、Unitreeの財務内容だ。Caixin Globalの報道によれば、Unitreeの2025年売上高は17億元、コア営業利益は5.91億元で、売上の約52%をヒューマノイドが占めているという。

ヒューマノイド業界というと「壮大な将来性はあるが、今は赤字で当然」という企業がほとんどの中で、Unitreeは既に黒字で、しかも公開市場での株価がつく初めてのヒューマノイドメーカーになろうとしている。これは業界の中でも異例のポジションだ。もっとも、この数字はあくまで会社側の開示情報であり、独立監査を経た数字とどこまで同一視できるかは、今後の開示資料を注視する必要がある。

同じ週に起きた、もう一つの重要な技術発表

規制とIPOの話題に隠れがちだが、同じ週にGoogle DeepMindがGemini Robotics 2という重要なモデル群を発表している。これまでのGeminiロボティクスモデルは上半身の制御が中心だったが、今回の新バージョンは脚・胴体・腕・手を1つのポリシーで統合的に制御する、初めてのバージョンだという。Apptronikのヒューマノイド「Apollo 2」で実証されており、全身での物体操作タスクで45.7〜76.3%、指先を使う細かい作業では36〜92%という成功率が公開されている。

ちなみにこの数字の内訳は正直に見ておく価値がある。「電球を外す」タスクは92%の成功率だった一方、「電球を取り付け直す」タスクは36%にとどまっている。同じ電球というオブジェクトを扱う作業でも、外す(緩める)動作と、取り付ける(正確に位置合わせしてねじ込む)動作とでは、要求される精度がまるで違うということが、この数字の落差から見えてくる。この手の「タスクごとの成功率のばらつき」は、デモ映像の派手さだけでは分からない、実装の難しさの分布を教えてくれる貴重な情報だ。

エンジニアとして見ておきたいこと

今回のニュース群を並べて見えてくるのは、ヒューマノイド業界が「技術検証」のフェーズから「規制」「資本市場」「実運用」という、より泥臭い現実の土俵に本格的に移りつつあるということだ。FCCの規制は見出しほど強力ではないが、今後の「条件付き承認」の運用実態次第では、実質的な参入障壁として効いてくる可能性がある。

Unitreeの上場が成立すれば、ヒューマノイド企業の実際の財務状況が、目論見書という形で初めて公開市場の目に晒されることになる。これまで各社の「累計出荷台数」や「稼働時間」といった自己申告の数字を検証しづらかったこの業界にとって、監査済みの財務データが手に入るというのは、地味だが大きな一歩だ。今後の開示内容を注視していきたい。

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売上93%増、株価15%急騰——Palantirの決算が突きつける「Rule of 40」の異常値

▶ Palantirが8月3日発表した第2四半期決算で売上高が前年比93%増の19億4000万ドル、米国商業部門は149%増、GAAP純利益が四半期として初めて10億ドル超に到達し株価が時間外で15%近く急騰。Rule of 40スコア155という異常値、PSR60倍・PER150倍超という評価倍率、年初来29%下落していた株価がなぜ急反発したのかを、業績指標と評価倍率という異なる軸から会計的に整理する。

売上93%増、株価15%急騰——Palantirの決算が突きつける「Rule of 40」の異常値

8月3日、データ分析大手Palantir Technologiesが第2四半期決算を発表し、時間外取引で株価が一時15%近く急騰した。売上高は前年同期比93%増の19億4000万ドルで、市場予想の18億1000万ドルを上回った。会計士としてこの決算で注目したいのは、成長率の派手さそのものよりも、その成長がどれだけ「質」を伴っているか、そして市場がそれにどう評価をつけているか、という部分だ。

数字の中身を分解する

まず基本の数字を押さえておきたい。1株当たり利益(EPS)は調整後41セントで、市場予想の35セントを上回った。純利益は10億7000万ドルに達し、前年同期の3億2900万ドル(EPS 13セント)から大きく伸びている。四半期として初めて、GAAP(米国会計基準)ベースの純利益が10億ドルを超えた四半期となった。

特筆すべきは米国商業部門の伸びだ。前年同期比149%増の7億6400万ドルとなり、2024年からの複利計算では380%の伸びになるという。この結果を受けて、Palantirは2026年通期の米国商業部門売上高のガイダンスを、従来の32億2000万ドルから34億2000万ドル超へと上方修正した。米国政府部門の売上も前年比90%増の8億900万ドルと、決して見劣りしない伸びを示している。

「Rule of 40」が155という意味

会計・投資の世界でソフトウェア企業の健全性を測る指標に「Rule of 40」というものがある。これは「売上成長率」と「フリーキャッシュフロー(FCF)マージン」を単純に足し合わせた数字で、合計が40を超えていれば健全な成長企業とみなされる、という経験則だ。

今回のPalantirのRule of 40スコアは155に達したと報じられている。売上成長率93%とFCFマージン63%を単純合算した数字だが、これは公開されているソフトウェア企業の中で、前例のない水準だとされる。40が合格ラインとされる指標で155という数字が出ているという事実は、この決算がいかに「規格外」だったかを物語っている。

株価には既に「完璧」が織り込まれている

一方で、会計士としてもう一つ見ておきたいのが、株価に対する評価倍率だ。決算後の株価水準で計算すると、Palantirの株価売上高倍率(PSR)は60倍を、株価収益率(PER)は150倍を超える水準にあるという指摘がある。

これがどういう意味を持つかというと、「既にほぼ完璧な業績が、将来にわたって織り込まれている」株価だということだ。PSR60倍・PER150倍という水準は、市場が今後も驚異的な成長が続くことを前提にして初めて正当化できる数字であり、逆に言えば、成長率が少しでも鈍化する兆候が出れば、株価が大きく調整するリスクを抱えているとも言える。実際、Palantir株は好決算前まで、AIソフトウェア取引全体の勢いが鈍るのではという懸念から、年初来で29%下落していた経緯がある。今回の決算は、その懸念をいったん打ち消す内容だったと言えるだろう。

「Rule of 40が155」と「PER150倍」は矛盾しない

一見すると「業績は驚異的に良いのに、株価は年初来で下落していた」というのは矛盾するように見えるかもしれないが、これは会計的にはよくある構図だ。Rule of 40は「その期の業績の健全性」を測る指標であり、PERやPSRは「将来の期待値に対して現在の株価が高いか安いか」を測る指標であって、そもそも見ている軸が違う。

つまり今回のPalantirのケースは、「業績そのものは非常に健全(Rule of 40が異常値)だが、その健全さがどこまで長期間持続するかについて、市場の見方が定まっていなかった(PERが変動しやすい)」という状態だったと整理できる。決算発表という「新しい情報」が入ったことで、市場の期待値が一気に上方修正され、株価が急騰したという流れだ。

会計士として見ておきたいこと

Palantirの最高収益責任者は決算説明会で、「我々のQ2決算は前例のない結果だが、まったく驚くべきことではない。長年警告してきた大規模言語モデル導入の急激な市場シフトが、今まさに起きている」と述べている。この発言の是非はさておき、企業側が「これは一時的な特需ではなく、構造的なシフトの結果だ」と主張していることは、投資判断をする上で押さえておくべきポイントだ。

一方でモーニングスターは、Palantirに対して「Very High Uncertainty(非常に高い不確実性)」という評価を付けており、同社の対応可能な市場規模がどこまで大きいか、そして各市場にどこまで深く浸透できるかについて、依然として不透明感が残ると指摘している。93%という成長率の高さと、PER150倍という株価評価の高さは、いわばコインの表裏の関係にある。今回のような「規格外」の決算が今後も継続的に出せるかどうかが、この株価水準を正当化し続けられるかの分水嶺になりそうだ。

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